認知症は「なってから」では遅い?早めの準備が大切な理由
「最近、人の名前が出てこない」「同じ話を繰り返してしまう」――そんな小さな変化に不安を感じたことはありませんか。認知症は、誰にでも起こりうる身近な病気です。厚生労働省の推計では、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になるとされています。
認知症の最大の特徴は、進行すると「自分のことを自分で決められなくなる」という点です。預貯金の管理、医療や介護の選択、財産の処分など、人生の大切な判断ができなくなってしまうのです。だからこそ、判断力がしっかりしている「今」のうちに準備しておくことが、ご自身とご家族を守ることにつながります。
この記事では、認知症になる前にやっておきたい具体的な準備を、わかりやすくご紹介します。40代〜70代の今だからこそ始められる「備え」を、一緒に確認していきましょう。
認知症になると困ること
まずは、認知症が進行すると具体的にどんなことが起こるのかを知っておきましょう。
銀行口座が凍結される可能性がある
認知症と診断され、本人に判断能力がないと金融機関が判断すると、預貯金の引き出しや解約ができなくなる「口座凍結」が起こることがあります。たとえご家族であっても、本人の代わりに自由にお金を動かせなくなり、介護費用や医療費の支払いに困るケースが少なくありません。
不動産の売却や契約ができなくなる
施設に入るために自宅を売りたくても、本人に判断能力がなければ売買契約は無効とされます。リフォームや賃貸契約なども同様で、財産があっても活用できない状態に陥ってしまいます。
医療・介護の希望が伝えられない
延命治療を望むか、どこで最期を迎えたいか――こうした大切な希望も、判断力が衰えると本人の口から伝えることが難しくなります。結果として、ご家族が「本人はどうしたかったのか」と悩み続けることになりがちです。
判断力があるうちに準備しておきたい5つのこと
1. 財産の整理と「見える化」
まず取り組みたいのが、ご自身の財産の全体像を把握し、一覧にまとめておくことです。預貯金、不動産、保険、株式、借入金などをノートやエンディングノートに書き出しておきましょう。
どこの銀行にいくら預けているか、どんな保険に入っているかをご家族が把握できていないと、いざというときに大変な手間がかかります。通帳や保険証券の保管場所も、信頼できる家族に伝えておくと安心です。
2. 任意後見制度を検討する
「任意後見制度」とは、判断能力があるうちに、将来自分の代わりに財産管理や契約をしてもらう人(後見人)をあらかじめ決めておく制度です。公正証書で契約を結んでおくことで、認知症になった後も信頼できる人に支援してもらえます。
認知症になってから利用する「法定後見制度」と違い、自分で後見人や支援内容を選べるのが大きなメリットです。誰に任せたいかを元気なうちに決められる点が安心につながります。
3. 家族信託という選択肢
近年注目されているのが「家族信託」です。これは、信頼できる家族に財産の管理や運用を任せる仕組みで、認知症による口座凍結を防ぐ有効な手段とされています。
たとえば、自宅や預貯金の管理を子どもに任せておけば、本人が認知症になっても、子どもが必要に応じて不動産を売却したり、介護費用を捻出したりできます。専門家に相談しながら、ご家庭に合った形で活用を検討するとよいでしょう。
4. エンディングノートに希望を書き残す
エンディングノートは、ご自身の希望や情報を自由に書き残せる便利なツールです。法的な効力はありませんが、次のような内容を書いておくと、ご家族にとって大きな道しるべになります。
- 受けたい医療・受けたくない医療(延命治療の希望など)
- 介護を受けたい場所(自宅・施設など)
- 財産や保険、契約に関する情報
- 家族や友人への伝えたい言葉
- 葬儀やお墓に対する希望
判断力がしっかりしている今だからこそ、ご自身の気持ちを正直に書き残しておけます。一度書いて終わりではなく、年に一度見直す習慣をつけるとよいでしょう。
5. 遺言書を作成しておく
財産の分け方について明確な希望がある場合は、遺言書を作成しておくことをおすすめします。特に「公正証書遺言」は、公証人が関与するため形式の不備が起こりにくく、確実性が高い方法です。
遺言書があることで、相続をめぐる家族間のトラブルを未然に防ぐことができます。認知症が進むと遺言書を作成する能力がないと判断され、無効になる恐れもあるため、早めの準備が肝心です。
家族とのコミュニケーションも大切な準備
制度や書類の準備と同じくらい大切なのが、ご家族との対話です。「縁起でもない」と避けてしまいがちな話題ですが、元気なうちに自分の希望を伝えておくことは、ご家族への何よりの思いやりになります。
「もしものとき」を話し合うきっかけづくり
いきなり重い話を切り出すのは難しいものです。お正月やお盆など家族が集まる機会に、「最近こんな記事を読んでね」と話を始めてみたり、エンディングノートを一緒に書いてみたりするのもよい方法です。
大切なのは、家族みんなが「本人の希望」を共有しておくこと。これにより、いざというときに迷わず、本人の意思を尊重した選択ができるようになります。
かかりつけ医を持っておく
体調や物忘れの変化に早く気づくためにも、信頼できるかかりつけ医を持っておくことが大切です。認知症は早期発見・早期対応によって、進行を緩やかにできる場合もあります。気になる症状があれば、早めに相談する習慣をつけましょう。
まとめ|「今」始める準備が、未来の安心につながります
認知症になる前の準備は、決して特別なことではありません。財産の見える化、任意後見や家族信託の検討、エンディングノートや遺言書の作成、そして家族との対話――これらを判断力のある今のうちに少しずつ進めておくことが、ご自身とご家族の未来を守ります。
とはいえ、「何から手をつければいいのかわからない」「制度が難しくて一人では不安」という方も多いのではないでしょうか。そんなときは、専門家や同じ思いを持つ仲間に相談してみることをおすすめします。
神戸市の地域密着型終活サポート「あい神戸」では、終活に関するさまざまなご相談をお受けしています。看護師が常駐する「看護師カフェ」では、医療や介護、認知症への備えについて、温かいお茶を飲みながら気軽にお話しいただけます。専門知識を持つスタッフが、あなたの不安に寄り添いながら、一人ひとりに合った準備をお手伝いします。
「まだ早いかな」と思う今こそ、準備を始める絶好のタイミングです。ぜひお近くの「あい神戸」へ、お気軽にお立ち寄りください。あなたとご家族の安心な未来づくりを、地域でしっかりと支えてまいります。

